本項目では、開業から40余年に渡る常武電鉄ちばらき線のダイヤ史を紐解いていく。
更に、近い将来に起こりうるダイヤの変化を予測してみる。

常武電鉄のダイヤの特徴

常武電鉄が開業してから、一貫して変わらないダイヤの特徴が2点ある。

①都内側の緩急比を極力1:1(2005年以降のちばらき線は1:2)としている点
②各時間帯ごとに短周期のパターンダイヤとしている点

詳細は以下の通りである。

①均等な緩急比

緩急比とは、緩行(各停)と急行(急行系種別)の運行比率のことである。
各停の本数が急行系種別よりも多いと、中長距離移動の最速列車が少なくなり、駅での平均待ち時間が増加する。
逆に急行系種別の本数が各停よりも多いと、待避が増えて近距離移動が遅くなり、平均乗車時間が増加する。
各停と急行系種別の本数を等しくする、即ち緩急比を1:1にすることで、上記のデメリットを補うことが可能となる。
但し2005年以降のちばらき線では、急行系種別が2種類となり、緩急比1:2となった。

②短周期パターンダイヤ

パターンダイヤとは、一定時間を1周期として、同じ運行形態を繰り返すタイプのダイヤである。
例えばちょうど10分間に急行1本、各駅停車1本走るダイヤを繰り返すと、乗客が時刻表を見ずとも列車を使いやすくなる。
常武では、時代によって都内側が15分、10分、7.5分の短周期パターンダイヤを採用している。

①②が組み合わさることで、種別ごとに混雑率は平準化されることとなる。
これらは乗客側のみならず、運行側にもメリットが大きいため、長く用いられてきたと考えられる。

ダイヤの大きな転機

一方、ちばらき線開業から40余年で変化してきた点もある。
周辺環境の変化に伴い、転機といえるダイヤ改正は次の3つある。

1984年3月改正(vol 2)
2005年8月改正(vol 5)
2023年3月改正(vol 6)

これら3つの改正による変化を、下記にて述べる。

初めての競合意識――1984年3月改正(vol 2)

日中のパターンが15分から10分に変更となり、本数が1.5倍となった改正である。
柏から都内方向で競合する国鉄(現JR)常磐線を意識した、最初のダイヤ改正といえる。
それまでは競合意識というより、常磐線の輸送力補助の意味合いが強かった。
開業から6年経過し、都内側の有効列車を10分間隔とすることで、常磐線快速からの乗客転移を狙ったと思われる。

当時の常磐線は、快速電車と普通列車で停車駅が異なり、列車としての性格も大きく異なっていた。
1980年より全普通列車が柏停車となって以降も、都内方向の急行系は快速電車と合わせてランダムに毎時5~6本と、利便性はイマイチであった。
ここで常武側が10分サイクルのパターンダイヤとしたことで、柏はもとより、柏以東の常磐線各駅から常武に乗り換えて都内に向かう旅客が急増した。
この影響で、常武側は急行系停車駅の8連化を急ピッチで進行することとなった。

またこの改正より、終日に渡り八潮で緩急接続が行われるようになった。
これに伴い、日中は普通車で都内に出るしかなかった柏以西の各駅も急行系種別を使うことが可能となり、都内方面への所要時間大幅短縮に一躍買った。
但し、このダイヤ改正では10分サイクルで対都内の移動に重点を置いたあまり、柏での緩急接続が間延びするという欠点もあった。
この問題は、10年後の1994年3月改正(vol 3)における、7.5分サイクルダイヤへの増発によってようやく解消することとなった。

2路線の相互連絡による競合強化――2005年8月改正(vol 5)

つくば線開業と、それに伴う特急運転開始の白紙ダイヤ改正である。
前改正からは、日中の運用が27→29運用に増加している。
終日の運用数は、平日は不変(40運用)、休日は23→30運用となった一方、再度8連化が進められた影響で休日の2連運用が14→6運用に激減した。
つくば線とちばらき線の直通運転は見送られたものの、常武でも北千住―柏間の移動が可能となったことで、常磐線との競合関係がより強いものとなった。
特に日中は、2路線の特急を三郷で同時に発着させ、相互の乗換えを行うことで4方向の最速移動を可能とした。
この試みは非常に画期的で、柏でJRに乗り換えていた沼南地域の乗客の一部が、つくば線経由で北千住や秋葉原に向かうようになった。
これにより、三郷―柏間の混雑率がその分上昇した。

このダイヤ改正において、長らくちばらき線において続いた緩急比1:1のダイヤは終止符を打った。
その代わり、特急、急行、各停(普通から改称)をそれぞれ10分間隔で運行することで、更なる速達化を図った。
結果として、池袋―柏間が21分(5分短縮)、北千住―柏間が15分、秋葉原―柏間が24分で結ばれることとなり、特別快速を新設したJR側の施策も空しく常武側の圧勝となった。
但し急行と各停は減便となったため、特急通過駅の利便性は低下した。

とはいえ、特急と各停の接続が無いことが功を奏し、遠近分離がかなり理想的な形で行われているといえる。
その後の常武の運命を決定づけた完成系ともいえるこのダイヤは、その後18年間に渡り大きく形を変えず採用され続けた。
2015年3月には、上野東京ライン開業という一大イベントがあったものの、常武側に大きなダメージは無かった。

45年越しに実現した相互直通――2023年3月改正(vol 6)

京王電気鉄道(以下京王)との直通運転開始に伴う白紙ダイヤ改正である。
白紙とはいえ、池袋―龍ケ崎間のダイヤは概ね②のダイヤを踏襲している。
新宿―池袋間が開業し、調布や八王子、橋本方面へ直通運転が開始されたことで、車種のみならず客層も多様化した。
しかし沿線にレジャー施設を持たない常武にとっては、既存区間の混雑率は微増に留まることが予想され、実際にその通りになった。
一方、新規開業した新宿―池袋間は、常武より京王からの直通利用が多いと見積もられた。
池袋で各停の大半が折返し、急行が特急待ちで長時間停車をするダイヤが採用され、あたかも池袋から京王かのようなダイヤとなった。
三大副都心全てのアクセスが可能となる京王が、京王沿線―池袋間の有効本数を増やすよう常武に圧をかけたという都市伝説も流れた。
しかし実際のところは、2面3線という新宿の設備制約が原因だと思われる。

直通以外で大きく変化があったのは、平日夕方の下りダイヤである。
これまで緩急比2:3の変則パターンであったところ、日中の10分サイクルに都内折返しの各停が加わるパターンとなった。
これは京王側のダイヤサイクルに配慮した結果と思われ、見た目は綺麗になったものの、急行系種別の混雑に拍車をかける形となった。
特に西新井と八潮停車の急行系(急行)が12本→6本に半減した上に8連が集中し、都内からの有効列車が20本→12本に減少したことで、18時台以降の下り列車は急行を中心に混雑が激化した。
感染症流行の自粛ムードが完全に落ち着き、街に人が戻ったタイミングでの改正であったため、乗客から顰蹙を買うこととなった。
しかも、ダイヤパターンを合わせるためにつくば線も日中並みの本数に削減され、総合的に夕ラッシュ時の利便性は低下した。
その一方、毎時6本も増発に充てた都内シャトルは、西新井までに急行に抜かれることから利用が限定的となった。
状況を見かねた駅員が、短区間利用は極力シャトルを利用するよう呼びかける有様である。
ダイヤ改正から半年程度経つと、混雑を敬遠して都内シャトルを待つ乗客が一定数現れ、急行の混雑が多少低減するという消極的改善が見られた。
次回以降の改正で、当該時間帯のダイヤにテコ入れは為されるのか、注目したい。

今後考えられる動向

①急行系種別の末端各停化と減便

電鉄布佐―電鉄龍ケ崎間は、日中1時間あたり特急3本、急行3本が運行されている。
この区間は、将来的に本数が削減される可能性がある。
最大の根拠は、龍ケ崎市の人口減である。
2015年の約9万人をピークに減少が始まり、2020年には8万6千人程度に減少したという。
新規開業で一定の需要増が見込めるとはいえ、10年、20年先を見据えると、かなり現実的である。

考えられる減便は、日中の電鉄布佐以東の通過運転中止である。
これを行うと、同区間は各駅に停まる列車が1時間あたり3本となる。
かつて東日本大震災後の節電ダイヤでは、日中の特急を全て電鉄布佐で折り返す措置が取られた。
当時は一時的であったものの、利用者減少に伴う恒久的な措置として今後正式に取り入れられる可能性は十分ある。
キーとなるのは、2025年の電鉄藤ケ丘開業である。
どの程度運用増を許容するか、また運転士を適正人数確保できるかにかかっていると思われる。

マニア目線では、仮に減便がなされた際、運行系統がどのように再編されるかが気になるところである。
単純にすべての特急が電鉄布佐で折返しとなるのか、末端だけ各停となる「準特急」なる種別が出現するのかなど、妄想は尽きない。

②ホームドア設置に伴うダイヤパターン変更

現時点で常武電鉄では、ホームドア設置に向けての動きが一切見られない。
しかし他社の動向を考えると、そう遠くない未来に設置の動きが出てくると考えられる。
ホームドア設置を行うことで、所要時間が1駅あたり5~10秒程度増加すると考えられる。
常武では停車時間の短い駅では10~15秒程度でドア開閉を行うため、これが短くとも20秒程度に延長される可能性が高い。
この場合、特に日中ダイヤにおける特急の電鉄王子―電鉄三郷間の所要時間に影響が出る。
現時点で花畑での各停追い抜きタイミングは、上下共にタイミングが際どく、先行の各停に10~15秒程度の遅延が起こると手前で漏れなく徐行を強いられる。
ホームドア設置により、確実に現状パターンでの特急最速運転は不可能となるので、今後日中のダイヤパターンが変化する可能性がある。
考えられる変化は、下記3パターンである。

A. 特急の徐行

現状のダイヤパターンを維持しようとすると、最も無難な方法である。
現行の運転状況から察するに、下りは西新井―花畑間と三郷市―電鉄三郷間、上りは八潮―花畑間と宮城―電鉄王子間で先行列車に追いつき、徐行することになる。
これを許容するのであれば、現行のダイヤパターンを踏襲することができる。
但し、電鉄王子―電鉄三郷間で最大1分程度の所要時間増が予測される他、沼南台―電鉄布佐間でも所要時間増が見込まれる。

B. 電鉄西新井への特急停車

Aで述べた所要時間増は、実は電鉄西新井の停車にリソース配分が可能である。
現状、東武スカイツリーラインとの乗換えで混雑する同駅は、日中でも時間帯によって急行の輸送力だけでは心許ない場合がある。
電鉄西新井への特急停車は、この問題も同時に解決することができる。
ただ、長年電鉄王子―電鉄三郷間ノンストップを謳ってきた特急の停車駅をそう簡単に増やすかという懸念はある。
また上下共に新宿―電鉄池袋間の有効列車である特急の混雑率が、電鉄西新井停車により大きく上昇する可能性がある。

C. ダイヤパターンの再編

A、B共に防ごうとすると、最後に残るのはダイヤパターンの組み直ししか無い。
しかし管理人の想定では、少なくとも電鉄池袋―電鉄柏間のダイヤは上手く組み直すことが可能である。
下図は、特急に対する各停と急行の新待避パターンである。

各停は従来通り、八潮で急行と接続する。
一方特急待避駅は、現行の花畑・電鉄平和台から、高野・八潮に変更している。
また急行が電鉄柏で特急と連絡することで、戸張、鷲野谷、手賀町の利用者が特急を利用することが可能となる。
電鉄布佐での特急と急行の接続が無くなることで、電鉄布佐での列車処理に課題があるが、これが①で述べた特急の準特急化に繋がってくる(上図では敢えて特急としている)。

デメリットがあるとすれば、急行の所要時間が大きく増加することである。
現時点で急行は電鉄池袋で3~4分停車して特急の待避を行っているが、ここに2分半程度時間が伸びる。
更に電鉄柏でも待避することになり、急行は大きくスピードダウンすることになる。
このような事情から、上りの待避は電鉄池袋から新宿に変更して、特急への集中を極力抑えるであろうという想定をした。

また、電鉄柏では始終着各停を迅速に入れ換える必要があり、ここがもたつくとダイヤ乱れの原因となる。
待避のタイミングは結局ギリギリで、少しの遅延で特急が徐行を強いられる。
実際は多少スジを寝かせる可能性もあるが、最短の所要時間で結ぶには最も現実的なダイヤパターンではないかと考えている。

以上を以って、今後の動向予測とする。