京王との接続駅である新宿駅番線は、一大ターミナルでありながら構内が狭隘なことで知られている。
本項では、他に例を見ない新宿駅3番線の特殊ルールを解説する。
以下、京王→常武方面列車を東行、常武→京王方面列車を西行と記載する。
新宿駅の構内配線
ちばらき線の起点である新宿駅構内は、京王が管理を行っている。
1~5番線と引上線2本を有し、うち1~3番線は常武へ線路が繋がっている。
1~3番線(京王・常武ホーム)
島式ホーム1面と相対式ホーム2面に、線路3本を有する特異的な配線である。
加えて、電鉄高田馬場方に引上線(引1番線)を1本有している。
原則として3番線は東行が、1・2番線は西行が使用する(運行障害発生時はこの限りではない)。
2番線と3番線の間にある相対式ホームは降車専用ホームと呼ばれ、3番線に到着する電車から降りる乗客は原則このホームを使用する。
京王単独駅時代は2番線側からも降車できたが、常武との直通に先立ち2番線側は柵で封じられた。
4・5番線(京王・都営ホーム)
京王では「新線新宿駅」と案内することが多いものの、正式には新宿駅である。
島式ホーム1面2線に加え、笹塚方に引上線を有する。
本ホームと京王・常武ホームは改札内で結ばれており、3番線乗車ホーム笹塚方から伸びる連絡通路を使って行き来することができる。
常武の車両は笹塚方の引上線と、初台方の本線からこのホームまで入線可能であるが、常武の乗務員がこのホームに立ち入る機会はほぼ無い。
3番線だけの特殊ルール
以下では、3番線及び降車専用ホームで敷かれる変則的なルールに言及する。
乗客の乗降
1・2番線の2線を使える西行に対し、東行は3番線1線のみしか通常使用できない。
このことから、乗客側には3番線乗降の際に下記対応が求められている。
- 新宿で下車する乗客は、原則として進行右側の降車ホーム側から下車し、左側の乗車ホームには降りない。
- 新宿から乗車する乗客は、必ず乗車ホームから乗車する。
上記ルールの徹底により、、乗車客と降車客がホーム上で交錯しないようになっている。
また同方向の他列車への乗継ぎは、電鉄高田馬場で行うように案内がある。
但し、新宿駅に7:30から8:50に到着する列車に限り、乗車ホーム側への下車も認められている。
この場合は、乗車客が一旦降車客を待ってから乗り込むことになる。
なお、3番線乗車ホームと京王・都営ホームを結ぶ連絡通路は、始発から9:00まで3番線へ向かう方の一方通行となる。
これは乗換通路が非常に狭いことから、乗客の滞留を防ぐ目的で行われている。
そのため朝ラッシュの東行は、都営新宿線方面への乗換を笹塚で行うよう車内放送で呼びかけている(同時間帯東行は全列車が笹塚に停車する)。
これに伴い、同時間帯は京王西口、京王百貨店口、ルミネ口から京王・都営ホームへの入場ができなくなるため、各改札で注意喚起の放送と案内板掲出が行われる。
車掌のドア扱い
3番線では、車掌のドア扱いルールも特殊である。
これは当駅で京王と常武の乗務員が交代する上、両側のホームの開閉を行う必要があるためである。
停車時間は最短で朝ラッシュ時が50秒、それ以外が40秒であることから、非常に慌ただしい。
以下、特に変則的な3番線での車掌の交代の流れを記載する。
- 3番線乗車ホームに常武車掌が待機する。
- 東行列車が到着すると、京王車掌は降車ホーム側のドアを開ける。
- それと同時に常武車掌が乗務員ドアを外側から開錠し、乗務員室に入って乗車ホーム側のドアを開ける。
引継ぎは車内で手短に行う。 - 乗降を確認した後、京王車掌は降車ホーム側の、常武車掌は乗車ホーム側のドアを閉める。
- 最後に京王車掌が降車ホームに降り、常武車掌はそれを確認した後、運転士に発車合図を送る。
京王車掌は列車を見送った後、詰所へ引き上げる。
両側の扉を開閉させる必要があることから、このような特殊対応を行っている。
場合によっては、降車ホームより乗車ホームの扉が先に閉まることもあるため、常武車掌は京王車掌の動きも十分に確認する必要がある。
総括
設備制約の大きさから、乗客にも乗務員も変則的な対応を求められる新宿駅3番線。
乗降をスムーズに行うため、様々な工夫を凝らしていることが分かる。
1時間に最大68本を捌く新宿駅では、こうしたルールの徹底と乗客の協力により定時運行が成立しているのである。